足教組・教研会議 2000年度・基調提案

1,はじめに

 この一年間の動きは実にはげしくなってきています。あしたの状況もはっきりわからないくらい動い
ています。何がおこるかわからないという感じもします。昨年の今ごろを思いおこしてほしいと思いま
す。まだ区長選の最中でした。民主的な区政をつぶした勢力のことを忘れてはならないと思います。
 
 大きくみれば、昨年から「戦争協力法」「国歌・国旗法」「盗聴法」など憲法に抵触するのではない
かと思われる「悪法」が次々と成立しました。国民の権利より「国家秩序」を優先する政府の姿勢が
鮮明になっています。アメリカの戦争に自動的に協力させられる「戦争協力法」憲法よりアメリカの顔
色を優先するものです。警察が国民の通信を傍受することができるというのも国民の権利軽視です。

 国歌・国旗法にいたっては、国民の意見をまったく無視しての強行でした。さすがに「強制はできな
い」という政府答弁がありましたが、それをも無視する学校の管理職があとをたちません。さいきんで
は「みどりの日」を「昭和の日」と変える法律もできそうになっています。

 私たちの職場をめぐっては、「校長の言うことをきかないものは給料や異動で差別する」という人事
考課制度が多くの都民の声を無視して強行導入され、混乱をきわめています。

 このようにめまぐるしく変化する社会の中で、未来への展望を語るのがたいへん難しい状況になっ
ています。それでも変わらないのが、不況による国民生活の「悪化」です。今年の区内の中学卒業
生の進路状況をみると、70%以上が都立高校進学になっています。「とても私立高校にはあげられ
ない」という状況の反映ではないでしょうか。区内の中小企業の倒産も引き続き増加しています。親
の生活困難を反映して、学校納付金の滞納に悩んでいる学校も増えています。教育扶助受給を拡
大していく必要もあります。そして、私たちの賃金も4%引き下げられています。これは「4年前の給
料で働いている」という計算になります。そして、介護保険制度がスタートし、お金のある人だけが良
いサービスをうけられる、という実に「資本主義的な」施策が実施されています。貧しい人は早く死ね
ということです。一生懸命働いている人がつらい目に遭うという社会はよい社会とはいえません。一
方では、銀行に税金を投入し、つぶれそうな銀行を助けるというのですから、どこに向いた政治だとい
うのでしょうか。

 また、都の施策のいくつかが区に移管していくのにともなって、教育の分野では、教科書採択の権
限が区に移管されていきます。足立区では昨年から、これまでの都の方式にケチをつける一部のグ
ループから「学校票」をなくすよう請願がだされ、これが採択されてしまいました。これを受けて区教
委は「あらたな採択制度」を制度化しましたが、教職員の声の反映がむずかしくなっています。請願
をだしたグループは、「侵略戦争賛美」の歴史教科書をつくり、子どもたちにひろめようとする「新しい
歴史教科書をつくる会」に連動しています。これらの動きも軽視してはならないと思います。


2・新教育課程への移行期間にはいりましたが・・・・。

 2002年度から実施される「学校週5日制に伴う新教育課程」に摘要される学習指導要領が告示さ
れ、今年の四月から移行期間にはいっています。

@ 今年入学した一年生は三年生になった時から完全に新しい学習指導要領体制にはいります。短
  い時間の中で、どれだけ豊かな教育をすすめていくことができるかということが求められています。

A それぞれの教科の授業時間が大きく減ることになるので、それぞれの教科で何を学習の中心にす
  えるかという議論を職場でおこしていく必要があると思います。「大学生の学力」が問題になり、「ど
  んな学力」が求められているかも大きく議論されています。基礎・基本をしっかりという原則にたちつ
  つ、それぞれの教科の系統性や固有の学習をどうくみたてていくかも職場で議論していきたいと思
  います。これまでつみあげてきた民主教育の実践はそれぞれの民間教育研究団体で蓄積されてい
  ます。これらの成果に学びながら、21世紀の子どもたちにふさわしい学習内容をつくりあげる自主
  的な教育課程づくりが求められています。

B 「総合的な学習の時間」は「何をやってもよい」といいながら、区内でも何をやってよいかわからない
  管理職などからの「強制」がおこなわれている職場もあります。「テーマはなんでもよい」「毎週やら
  なくてもよい・・・ある時期にまとめてやってもよい」という原則をまず確認し、自分の学校の目の前の
  子どもたちの状況をしっかり分析し、どんな力をつけたらいいかという充分な職場討議の上で、とり
  くみをすすめていく必要があるでしょう。

   その際、これまでの学校の自主的な行事や自治を育てる文化活動などをしっかり見直し、位置づ
  けていくことも必要なことです。これまでの文化祭・学芸会・運動会・宿泊行事なども、りっぱな「総
  合的な学習」だといっていいでしょう。「総合学習」ではありません。「的」でいいのです。

   また、現代的なあらたな課題にとりくんでいくこともそれぞれの学校で考えていることではないで
   しょうか。「性教育」にとりくむ小学校、進路学習にとりくむ中学校、アジアの子どもたちとの交流
   にとりくむ中学校、地球規模の環境問題を考える、平和な世界をつくるための学習なども考えて
   いくことができると思います。

   さらに、教科学習の補充をこの時間にとりくむくふうもできると思います。学習そのものへのとらえ
   なおしをしていくことも求められています。

    中学では、この「総合的な学習の時間」をだれが担当するかという問題も生じています。今年か
   ら、機械的にこれまであった「必修クラブ」をなくしてしまいました。このことはこれまでの「クラブ活
   動」に問題があったということのようですが、それが何なのかはっきりしないままの移行でした。実
   際には放課後の部活動として、これまでの状況は何も変わっていません。それなのに都教委は「教
   員は一時間授業をよけいにもて」という態度にでています。

C 中学校では、選択教科の拡大が一層すすみ、教室でクラスの仲間と一緒に学習する時間はどんど
  ん少なくなってきています。学習集団とは何かも考えなければなりません。


3・高校入試をめぐって

 都政の反動ともかかわっていますが、昨年度から学区のわくが拡大し、今年度はそのワク自体もとり
はらってしまおうということになっています。わざわざ遠い高校に通わせようというのはエリートの子ども
だけです。学区撤廃はエリート校のますますのエリート化と底辺校の拡大がセットでなければ実現しま
せん。また、高校の多様化と入試選抜制度の多様化がますますはげしくなり、何を根拠に進路選択を
すすめればいいか、子どもも親もそして中学教師も混乱しています。

 都立高校の推薦入試制度も子どもたちに無用の不安を広げるものとなつています。落ちる子は何回
も落ちます。中学三年で何回も「オマエはだめだ」と宣告される子の気持ちが行政当局にわかるでしょ
うか。推薦・一次・二次とすべて失敗したT君は「先生、もう落ちるのはいやだよ」と言って都立高校定時
制二次の出願をしませんでした。「受験機会の増加」というふれこみでスタートした推薦入試は大きな問
題を広げています。教師にとっても「落ちる子の調査書」を何回も書くという事務量の増大が問題になっ
ています。そして高校の多様化は、中学の教師でも「新しい高校の教育内容」がよくわからずに指導す
るということになり、結局は子どもたちが進路先を確定していく材料を提供できないでいます。


4・管理主義教育の広がり

 「学校崩壊」という本がいまだに売れているそうです。今日の学校内での子どもたちの「荒れ」の状況
を逆手にとり、「親が悪い」と父母にその責任をなすりつけ、今ある学校の管理秩序をさらに強化しようと
説いている書物です。ここには子どもたちの健全な発達を願うよりも「学校の体面・体裁」を最優先させ、
子どもの成長をおさえこもうという意図がみられます。また、あらかじめ決められた「予定」にしたがって
たんたんと毎日をすごしていく、という「事務的な」傾向もないでしょうか。常に子どもたちの変化、成長を
分析し、計画を変更できるような柔軟な姿勢がほしいものです。基準は「子どもの成長」です。

 また、さいきんの小学校の学級の困難な状況も学級担任が一人でかかえこんで悩んでいる場合が多
くあります。学校全体ではげましあいながら、何が問題なのか、お互いにできることは何かを考えながら、
実践をすすめ、事態の克服にすすんでいるところもあります。しかし、根本には管理主義を克服し、変化
する子どもの状況を集団で分析しながら、新たな方策を視野にいれてとりくんでいくことも必要だと思いま
す。とかく経験主義的な姿勢が通用しなくなっているのも一方では現実なのです。

 儀式的なことを強調して「上の者の言うことにはだまって従う」ということを教えこもうという傾向も広が
っています。卒業式も子どもの成長の到達を確認する場ではなく、地域の手前、いかに整然と時間をす
ごすかということだけが基準になっている傾向がないでしょうか。研究奨励校問題もあります。教師の実
践力量をアップさせるというよりは管理職の得点だけが基準になっておしつけているところもあります。


5・地域との協力・共同のとりくみ

 「開かれた学校づくり」が話題になり、足立区でもこの四月から小学校2校、中学校3校で「開かれた
学校づくり協議会」がスタートしています。これは文部省の「学校評議会」構想から出発しています。真
に地域の人たちの声を教職員とともに考えあい、学校づくりをすすめるというのなら、これまでもPTAもあ
り、その運営の民主的なとりくみもすすめられてきました。区内では、一部地域ボスと管理職の親睦団
体になっているPTAもありますが、この既存の組織をまず大事にしていく必要があるでしょう。

 今回の「開かれた学校づくり協議会」はその委員の人選も校長の指名ということで、学校批判がしに
くくなっています。また、教職員の参加をみとめず、何を学校づくりに反映していこうというのでしょうか。
子どもたちの授業評価をこの「協議会」が取り扱うというものにもなっていて、人事考課の強行とあいま
って、その問題点を指摘せざるをえません。


6・教育課程を自主的に

 今年中学に入学した生徒は3年生になる時には完全に新教育課程になっていきます。今年度から
準備をしていかなければなりません。それに「総合的な学習の時間」の試行もおこなわれようとしてい
ます。「総合的な学習の時間」については、「必修の授業時間を減らさないようにする」「毎週必ずしも
とらなくてもよいこと」「どんなテーマでもよい」ことなどをそれぞれの学校で意思統一していくことが必
要です。

 みんながそろって受ける授業を減らさないようにするくふうは基本的なことです。もちろん、今よりも全
体の学校にいる時間は減っていくのですから、それぞれの教科で「教科内容の精選」を研究していくこ
とは一方でまた必要なことだと思います。そして、これまでのそれぞれの学校での自治と文化を大事に
するとりくみをきちんと総括し、継承していくことを考えていくことです。これらをこけからも「総合的な学習
の時間」に位置づけ、年間カリキュラムにくみこむことは可能なことです。その際、新しい「総合的な学習
の時間」の観点に位置付けていけばよいのです。「総合的な学習の時間」は「仲間づくり」というテーマ
でとりくんでもよいのです。毎週かならずこの時間を設ける必要はないので、年間のある時期にこの「総
合的な学習の時間」を集中してあてればよいので、毎週時間割の中にこの時間をかならずいれなければ
ならないというものでもありません。

 また、新しいテーマを考えて「総合的な学習の時間」にとりくんでいく場合においても、子どもたちの状
況をよく分析して、それぞれの学校にふさわしいものを設定していく必要があるでしょう。上から(よそか
ら)おしつけられたテーマでやっても成果が大きくあがるということは考えにくいことです。


7・教育研究会議のとりくみ

 足立の教育に責任をもち、足立の子どもたちの全面発達を願い、足立の教師の実践力量のアップをめ
ざしていくとりくみをすすめたいと思います。教研活動を旺盛にすすめられるように今年もがんばっていき
たいと思います。そのためにいくつかの方針をもってのぞみます。各分会では援助体制をくみながら、と
りくみの交流をすすめ、ブロックでも支部でも実践交流を中心にしながら、学習もすすめていきたいと思い
ます。

@ 教研集会にとりくみます。

 ・全体会:6月21日(水)午後2時〜〜:於・西新井ギャラクシティ・ホール
  「学びを創る・・・総合的な学習の時間を考える」
     講師・菊地良輔氏(全国進路指導研究会代表)

 ・夏期教研集会   8月28日(月)・29(火)日 西新井青年センター(予定)

 ・一斉分科会:10月18日(水):会場未定

 ・春の講座:4月3日(火)

 *夏の教研などで、若い人向けの「入門講座」を設けるようにします。

A 教育実践講座・学習講座の開催

  「総合的な学習の時間にどうとりくむか」「荒れたクラスにどうとりくむか」などの 実践と学習の講座
  を適宜開催していきます。

B 職場・ブロックでの教研

  足立全体ではなかなか集まれなくても、職場や近隣の職場で集まって小・中の交流や 実践の交
  流がすすめられると良いと思います。

C 中学校に対する特別なてだて
  一昨年秋から月一回、中学校対策会議を持ち、中学校のとりくみを前進させようとし てきました。
 今年もこれを引継、中学校に焦点があたっている課題として考えられて いる「自治を育てるとりくみ」
 「非行克服の課題」「進路保障の課題」などの交流をは かり、共通理解をすすめていきます。現在第
 二水曜に集まっています。

D 教育研究会議の充実

  月一回の教研会議では実務的な相談だけでなく、必ず学習をすすめ、幅広い参加がで きるように
 します。ブロックから教研担当者をだし、教研会議を充実させます。

E 教研ニュースの発行
  足立の教育の実践の記録、情報の交換などを充実させます。

F 教育実践の資料収集

  ・卒業式のビデオ、文化祭・学芸会のシナリオ、生活指導の方針、年間計画など教育 実践上の資
   料を充実させていきます。

G 足立民主教育研究所(仮称)の設立について

 実現の可否について、準備の相談にはいります。