足教組・教研会議 2001年度・基調提案
1・はじめに
20世紀から21世紀に引き継いだ世の中の動きは子どもたちの未来にとって必ずしも明るいものとなっては
いません。この1年間も悪政の強行が続きました。森内閣は「神の国」発言以来、一貫した国民より国家重視
の施策をとり続け、自滅しました。かわって登場した小泉政権は、日本をさらに「国家中心」の国民ないがしろ
政策をすすめようとしています。
石原都政は、小泉政権と連動して、都民いじめを続けようとしています。
私たちの職場をめぐっては、「校長の言うことをきかないものは給料や異動で差別する」という人事考課制度
が多くの都民の声を無視して強行導入され、混乱をきわめています。また勤務時間問題では、労働基準法の
精神をねじまげ、教職員の苦労をふみにじる、という状況です。
このようにめまぐるしく変化する社会の中で、未来への展望を語るのがたいへん難しい状況になっています。
それでも変わらないのが、不況による国民生活の「悪化」です。今年の区内の中学卒業生の進路状況をみると、
70%以上が都立高校進学になっています。「とても私立高校にはあげられない」という状況の反映ではないで
しょうか。区内の中小企業の倒産も引き続き増加しています。親の生活困難を反映して、学校納付金を滞納せ
ざるをえない状況もうまれています。教育扶助受給を拡大していく必要もあります。そして、私たちの賃金も4%
引き下げられ続けています。これは「5年前の給料で働いている」という計算になります。そして、介護保険制度
がスタートし、お金のある人だけが良いサービスをうけられる、という実に「資本主義的な」施策が実施されてい
ます。一生懸命働いている人がつらい目に遭うという社会はよい社会とはいえません。一方では、銀行に税金
を投入し、つぶれそうな銀行を助けるというのですから、どこに向いた政治だというのでしょうか。
また、都の施策のいくつかが区に移管していくのにともなって、教育の分野では、教科書採択の権限が区に
移管されていきます。足立区では一昨年から、一部のグループから「学校票」をなくすよう請願がだされ、これが
採択されてしまいました。これを受けて区教委は「あらたな採択制度」を制度化しましたが、教職員の声の反映
がむずかしくなっています。請願をだしたグループは、「侵略戦争賛美」の歴史教科書をつくり、子どもたちにひろ
めようとする「新しい歴史教科書をつくる会」に連動しています。この教科書は、ありもしない神武天皇の東征を
地図入りで史実として描いたり、将軍は天皇の任命だったと言って日本の封建社会を天皇中心であったかのよ
うに描いたり、日本軍の残虐行為をまったく隠蔽し、あの戦争はアジアの国の解放を援助した、と書いてはばか
らない「とんでもない」教科書です。このような教科書で子どもたちが学習するとしたら、日本の未来は暗澹たる
ものとなってしまうでしょう。石原都政は、これを援護射撃し、採択から教師の意見を排除しようとしています。
足立区では、学校統廃合が行政の手で実に巧妙なやり方ですすめられています。まず千住地区の学校を大
幅にへらしていこうと考えています。三中の入学者はゼロになってしまいました。「将来なくなる学校に今からい
れておくことはない」という親と子どもの感情をたくみに利用したのです。効率よく行政をすすめようというだけの
ことです。これは文部科学省の「通学区域の自由化」と連動し、公立学校どおしを競い合わせるものとなってい
ます。子どもたちの通学がバラバラになれば、地域そのものも破壊されてしまうでしょう。
その行政が同じ口から「開かれた学校づくり」をいうのですから、自らの論理矛盾に気がつかない行政です。
「地域」をこわしておきながら、「地域」とともにと言っているわけです。しかも、足立区の「開かれた学校づくり」
は「この委員会で授業診断をおこなう」「教職員は協議会にいれない」というものですから、そのねらいはあきら
かです。
2・来年から新教育課程への移行します
2002年度から実施される「学校週5日制に伴う新教育課程」に摘要される学習指導要領がいよいよ来年四
月から本格実施されます。
@ 来年からに備え、短い時間の中で、どれだけ豊かな教育をすすめていくことができるかということが求めら
れています。
A それぞれの教科の授業時間が大きく減ることになるので、それぞれの教科で何を学習の中心にすえるか
という議論を職場でおこしていく必要があると思います。「学力低下」が問題になり、「どんな学力」が求めら
れているかも大きく議論されています。基礎学力をしっかり、という主張はおおかたの合意になっていますが、
それをどう実現していくか、そもそも基礎・基本とは何か、ということも議論がはじまっています。単なる「読み
書きそろばん」だけを基礎と考えるのではなく、小学校低学年でも子どもたちがしっかり考えるという道筋を
保障したいと思います。
B 「総合的な学習の時間」は小学校では模索的な実践がすすんできていますが、なかなか子どもたちを生き
生きさせて学習にむかわせる、という内容になっていないというのが実情です。そこで「何をやってもよい」と
いいながら、区内でも何をやってよいかわからない管理職などからの「強制」がおこなわれている職場もあり
ます。「テーマはなんでもよい、週やらなくてもよい、ある時期にまとめてやってもよい」という原則をまず確認
し、自分の学校の目の前の子どもたちの状況をしっかり分析し、どんな力をつけたらいいかという充分な職
場討議の上で、とりくみをすすめていく必要があるでしょう。
その際、これまでの学校の自主的な行事や自治を育てる文化活動などをしっかり見直し、位置づけていくこ
とも必要なことです。これまでの文化祭・学芸会・運動会・宿泊行事なども、りっぱな「総合的な学習」だといっ
ていいでしょう。「総合学習」ではありません。「的」でいいのです。
また、現代的なあらたな課題にとりくんでいくこともそれぞれの学校で考えていることではないでしょうか。
「心とからだ」にとりくむ小学校、読書活動、進路学習にとりくむ中学校、アジアの子どもたちとの交流にとり
くむ中学校、地球規模の環境問題を考える、平和な世界をつくるための学習、老人問題を考え、福祉の充
実を考える学習なども考えていくことができると思います。
地域にでかけての体験学習もとりくまれていますが、生き方にふれる、仕事に対する情熱を学ぶなどホン
モノとふれていく、という学習ではどんな「学び」が用意されているかをしっかり検討することが大切です。
さらに、教科学習の補充をこの時間にとりくむくふうもできると思います。
C 中学校では、選択教科の拡大が一層すすみ、教室でクラスの仲間と一緒に学習する時間はどんどん
少なくなってきています。学習集団とは何かも考えなければなりません。
また、選択教科で学習する内容の検討、条件整備もすすめる必要があります。
3・高校入試をめぐって
都政の反動ともかかわっていますが、昨年度から東京中どこでも受けられるという大学区制がしかれま
した。わざわざ遠い高校に通わせようというのはエリートの子どもだけです。学区撤廃はエリート校のます
ますのエリート化と底辺校の拡大がセットでなければ実現しません。これと合わせて独自の入試問題をつ
くる高校がでてきました。格差を広げるためにやっているようなものです。
また、高校の多様化と入試選抜制度の多様化がますますはげしくなり、何を根拠に進路選択をすすめ
ればいいか、子どもも親もそして中学教師も混乱しています。「特別記載事項」が廃止されました。これま
での20の子どもに内申点をおまけするというのがなくなったのです。すべての子どもに書いてよいことに
なりました。しかし、その扱いはあいまいです。結果としては良い方向に働いていません。何を基準に高
校が選抜しているのかはっきりしないからです。
都立高校の推薦入試制度も子どもたちに無用の不安を広げるものとなつています。中学三年で「オマ
エはだめだ」と宣告されとしまう子の気持ちが行政当局にわかるでしょうか。「受験機会の増加」というふ
れこみでスタートした推薦入試は大きな問題を広げています。教師にとっても「調査書」を何回も書くとい
う事務量の増大が問題になっています。そして高校の多様化は、中学の教師でも「新しい高校の教育内
容」がよくわからずに指導するということになり、結局は子どもたちが進路先を確定していく材料を提供でき
ないでいます。総合制の高校の現在もはっきりしません。
4・管理主義教育の広がり
区内の中学でも子どもたちの「荒れ」が新たな局面をむかえ、授業そのものも困難になっている学校も
あります。ベテランの教師が「子どもがわからなくなった」といって退職する例もあとをたちません。都教委
は「退職が予定より多かった」などと他人ごとのように言っているそうですが、現実を直視する必要があり
ます。
そんな中、子どもたちの健全な発達を願うよりも「学校の体面・体裁」を最優先させ、
子どもの成長をお
さえこもうという指導が全面に出てきている学校があります。また、あらかじめ決められた「予定」にしたが
ってたんたんと毎日をすごしていく、という「事務的な」傾向もないでしょうか。常に子どもたちの変化、成
長を分析し、計画を変更できるような柔軟な姿勢がほしいものです。基準は「子どもの成長」です。
また、最近の小学校の学級の困難な状況も学級担任が一人でかかえこんで悩んでいる場合が多くあ
ります。学校全体ではげましあいながら、何が問題なのか、お互いにできることは何かを考えながら、実
践をすすめ、事態の克服にすすんでいるところもあります。しかし、根本には管理主義を克服し、変化す
る子どもの状況を集団で分析しながら、新たな方策を視野にいれてとりくんでいくことも必要だと思います。
とかく経験主義的な姿勢が通用しなくなっているのも一方では現実なのです。
儀式的なことを強調して「上の者の言うことにはだまって従う」ということを教えこもうという傾向も広が
っています。卒業式も子どもの成長の到達を確認する場ではなく、地域の手前、いかに整然と時間をす
ごすかということだけが基準になっている傾向がないでしょうか。
新規採用者への研修はまさに強制的です。宿泊行事から帰ってこざるをえなかった、という例も報告
されています。子どもたちには「自主的な勉強を」と言っているはずです。おとなにむかって「強制的な
勉強」はなじみません。
5・地域との協力・共同のとりくみ
「開かれた学校づくり協議会」が多くの学校につくられはじめました。真に地域の人たちと教職員とでと
もに考えあい、学校づくりをすすめるというのなら、これまでもPTAもあり、その運営の民主的なとりくみも
すすめられてきました。区内では、一部地域ボスと管理職の親睦団体になっているPTAもありますが、こ
の既存の組織をまず大事にしていく必要があるでしょう。
足立教育懇談会は、高校増設の運動をひきつぎながら、地域とともに足立の教育を考える組織として
活動を続けています。各地域の「教育を守る会」も各地で活躍しています。これらの動きを促進する必要
があります。
6・教育課程を自主的に
来年からは新教育課程に完全移行していきます。土曜日が休みになる分、全体の学校にいる時間は
短くなるので、短い時間で何ができるかを考えていくことが必要です。
みんながそろって受ける授業を減らさないようにするくふうは基本的なことです。それぞれの教科で「教
科内容の精選」を研究していくことは必要なことだと思います。
そして、これまでのそれぞれの学校での自治と文化を大事にするとりくみをきちんと総括し、継承してい
くことを考えていくことです。これらをこけからも「総合的な学習の時間」に位置づけ、年間カリキュラムにく
みこむことは可能なことです。その際、新しい「総合的な学習の時間」の観点に位置付けていけばよいの
です。「総合的な学習の時間」は「仲間づくり」というテーマでとりくんでもよいのです。毎週かならずこの
時間を設ける必要はないので、年間のある時期にこの「総合的な学習の時間」を集中してあてればよい
ので、毎週時間割の中にこの時間をかならずいれなければならないというものでもありません。
また、新しいテーマを考えて「総合的な学習の時間」にとりくんでいく場合においても、子どもたちの状
況をよく分析して、それぞれの学校にふさわしいものを設定していく必要があるでしょう。上から(よそか
ら)おしつけられたテーマでやっても成果が大きくあがるということは考えにくいことです。
7・教育研究会議のとりくみ
足立の教育に責任をもち、足立の子どもたちの全面発達を願い、足立の教師の実践力量のアップをめざ
していくとりくみをすすめたいと思います。教研活動を旺盛にすすめられるように今年もがんばっていきたい
と思います。そのためにいくつかの方針をもってのぞみます。各分会では援助体制をくみながら、とりくみの
交流をすすめ、ブロックでも支部でも実践交流を中心にしながら、学習もすすめていきたいと思います。
@ 教研集会にとりくみます。
全体会:6月20日(水)午後2時〜〜:於・区庁舎ホール
「新しい教科書を考える」・講師:俵義文氏(教科書ネット21)
夏期教研集会 8月27日(月)・28(火)日
西新井青年センター(予定)
一斉分科会:10月17日(水):会場未定
春の講座:4月3日(水)
*夏の教研などで、若い人向けの「入門講座」を設けるようにします。
A 教育実践講座・学習講座の開催
「総合的な学習の時間にどうとりくむか」「荒れたクラスにどうとりくむか」などの 実践と学習の講座を適宜
開催していきます。
B 職場・ブロックでの教研
足立全体ではなかなか集まれなくても、職場や近隣の職場で集まって小・中の交流や 実践の交流がす
すめられると良いと思います。
C 中学校に対する特別なてだて
月一回、中学校対策会議を持ち、中学校のとりくみを前進させようとしてきて3年目になります。今年も
これを引継、中学校に焦点があたっている課題として考えられている「自治を育てるとりくみ」「非行克服
の課題」「進路保障の課題」などの交流をはかり、共通理解をすすめていきます。現在第二水曜に集まっ
ています。
D 教育研究会議の充実
月一回の教研会議では実務的な相談だけでなく、必ず学習をすすめ、幅広い参加がで きるようにし
ます。ブロックから教研担当者をだし、教研会議を充実させます。
E 教研ニュースの発行
足立の教育の実践の記録、情報の交換などを充実させます。
F 教育実践の資料収集
・卒業式のビデオ、文化祭・学芸会のシナリオ、生活指導の方針、年間計画など教育 実践上の資料
を充実させ ていきます。
G 足立民主教育研究所(仮称)の設立について
実現の可否について、準備の相談をすすめます。