品質コストのトレードオフ

(1) 自発的原価と非自発的原価の態様
品質コストを合計したものが総品質コストである。

総品質コスト=予防コスト+評価コスト+内部失敗コスト+外部失敗コスト

■自発的原価
予防コスト、評価コストは、経営者の裁量による管理可能な費用なので自発的原価と呼ばれる。

■非自発的原価
内部失敗コスト、外部失敗コストは、経営者にとっては管理不可能な費用なので非自発的原価と呼ばれる。

■伝統的な品質コストの様態
自発的原価と非自発的原価の間には、図表1の左側のようにトレード・オフの関係が見られる。予防コストや評価コストを高めていくと、内部失敗コストと外部失敗コストは減少していく。備えあれば憂いなしと言われるが、事前に予防や評価を強化すれば失敗の確率は小さくなる。

品質コストが開発された当初の品質管理技法の二次用具としての品質コストは、適合品質を対象としたものであり、予防・評価コストと失敗コストのトレード・オフに基づいて展開された。

図表1

■TQM思考の品質コストの様態
しかし、1970年以降の競争の激化にともなう品質管理活動の全社的な拡大やTQMの提唱は、高品質と低コストが同時に達成可能であることを認識させ、図表1の右側のように新しい様態が提唱された。



(2) 品質コスト事例
プラントの制御機器メーカーであるJ社では、199X年から品質コストシステムを導入している。J社では、全社員の意識を品質に向けさせるには、品質が見えるようにする必要があると考えた。

今まで製造部門では、不良率によって品質を定量的に把握していたが、これだけでは全社員の共通言語にはならなかった。その点、コストという尺度で品質を評価すれば、営業、開発・設計、製造、購買部門などすべての部門・全社員が同じ土俵で話ができるようになるという結論を出した。

J社では品質コストを予防コスト(Prevention cost)、評価コスト(Appraisal cost)、失敗コスト(Failure cost)に三分した形で品質コストを分類し、月次で測定と報告を実施している。

当初、品質コストの内訳は、図表2に示すように予防コストが17.9%、評価コストが51.1%、失敗コストが30.9%で、評価コストが約半分を占めていた。

図表2

J社の品質改善の基本的な考え方は、品質不良を減らすために、予防活動を強化・充実させることであった。その結果として、失敗コストや評価コストも低減させるというものである。約2年間にわたる予防活動強化の結果、予防コスト、評価コスト、失敗コストの構成比率は図表3のようになり、品質コストも約20%低減した。

図表3




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